何かが道をやってくる

管理人:平井宏樹

人体冷凍保存(クライオニクス)

不治の病に侵された人体を冷凍保存して、蘇生法が完成した時に解凍する技術。

 

人体を冷凍すると、細胞内の水が凍り体積が増える。そうすると細胞を包む細胞膜が破壊され、人体に多大なダメージを与える。

こうした問題を解決すべく、体内の液体を不凍液に入れ替えるなどの方法はあるが、人体を傷つけぬように行うのは難しいだろう。

 

だが、おそらく最大の問題は、生き返った後のことである。蘇生後、その人物はどんな人生を送るのだろう?『ブレスオブザワイルド』のリンクのように100年間眠ったとしたら、最悪、言葉すら通じない可能性がある。
さながらリップ・ヴァン・ウィンクルのように、「昔はよかった」と嘆きながら生きるしかないのか。そうならないよう、社会参入のため支援施設の導入も考慮すべきかもしれない。

 

人体冷凍保存という技術は、ロバート・エッティンガー(Robert Ettinger 1918-2011)という人物の活動で広まった部分が大きい。Cryonics Instituteの初代会長であり、1962年の著書『不死への展望』(The Prospect of Immortality、日本語未訳)が人体冷凍の幕開けとすれば、およそ60年の歴史があることになる。

現代、人体冷凍を行う最大の組織はおそらくアルコー延命財団(Alcor Life Extension Foundation)で、現時点で191体の遺体(組織内では遺体と言わず、「患者」と呼ばれる)を管理しているそうだ。不名誉なことだが、色んな訴訟や論争によって有名な組織である。

2009年、アルコーの元メンバー、ラリー・ジョンソン氏によって告発本が出版され、『人体冷凍 不死販売財団の恐怖』(講談社)のタイトルで翌年、日本語訳された。

内容はなかなかえげつない。要約記事のリンクを下に貼るが、文章だけでも閲覧注意だ。

 

最後の審判」の教えでは、死者は時がくれば復活するとされる。そのため日本とは異なり、特にカトリック教圏では遺体を傷つけない土葬が多い。現代でこそ、医学の発展のために献体する人も少なくないが、かつて西洋においては遺体を傷つけるのは最大の不名誉と忌避されていた。そうした信仰や死への恐怖も、人体冷凍保存の技術を後押ししているのだろう。

 

 

参考

 

ja.wikipedia.org

ja.wikipedia.org

www.alcor.org

ja.wikipedia.org

bookclub.kodansha.co.jp

gigazine.net