何かが道をやってくる

管理人:平井宏樹

「狂人の真似とて大路を走らば即ち狂人なり」

吉田兼好(1283?-1352?)の随筆『徒然草』の第85段に書かれている一文。 もう少し文脈の全貌が見えるよう、長めに引用してみよう。 狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり。悪人の真似とて人を殺さば、悪人なり。驥を学ぶは驥の類ひ*、舜を学ぶは舜の徒…

佯狂者(ようきょうしゃ)

東方正教会における聖人の称号の一つ。 「佯狂者」の「佯」という字には「よそおう」という意味があり、文字通り解釈すると「狂人の振りをする者」となる。社会的な地位や財産、慣習には脇目もふらず、信仰のために生活の全てを捧げる人物だ。英語では"Fooli…

ビコリム戦争(Bicholim conflict)

1640年から1641年にかけて、ポルトガルとマラーター王国(正式な建国は1674年のため、「王国」と称するのは不適だが、便宜上そう呼ぶ)の間にインドの州ゴア北部のビコリムで起こった衝突のこと。ポルトガル帝国の勝利に終わり、その後の植民地支配にも大き…

サンセリフ(San Serriffe)

1977年のエイプリルフールに、イギリスの新聞『ガーディアン(The Guardian)』に掲載された架空の国。書体の一種サンセリフ(Sans-serif)とは綴りが異なるため注意。 エイプリルフールのジョーク記事なのだが、力の入れ方が半端ではない。7ページもある特…

「青い目の島民」(The blue-eyed islanders)

論理パズルの一種。 少々長いが、内容を紹介する。色々パターンがあるが、以下はその一例である。 人口1000人の島がある。そのうちの100人は目が青く、900人は茶色だ。ところが、島には鏡がなく、その島の宗教では目の色について語るのは一切禁じられている…

三体問題

フランスの数学者アンリ・ポワンカレ(Henri Poincaré 1854-1912)による研究が有名な、物理学上の問題。Wikipediaでの表現をそのまま引用すると、「互いに重力作用する三質点系の運動がどのようなものかを問う問題」のこと。要は天体が三つ近づくとどうなる…

アブダクティー(abductee)

英語で"abuductee"というと「誘拐された人」といった意味になり、場合によっては「拉致被害者」を指すこともあるが、カタカナで「アブダクティー」と表記する時は、「エイリアンに誘拐された人」を指すことが多い。念のため言っておくと、こちらはエイリアン…

マクマーティン保育園裁判(The McMartin Preschool Trial)

1984年から1990年にかけて、アメリカのカリフォルニア州で行われた刑事裁判。ただし証拠不十分として容疑者は全員無罪となり、史上最長の刑事裁判であり史上最大の冤罪事件となった。 事件の概略をまずは述べる。「マクマーティン」というのは起訴された園長…

聖変化

聖餐において、パンやブドウ酒がキリストの体と血に変化すること。 カトリック教会には「七つの秘跡」と呼ばれるものがあり、 ・洗礼 ・堅信 ・結婚 ・終油 ・叙階 ・聖餐 ・悔悛 と分けられる。聖餐は秘蹟の中でも、食事に関するものであるだけに教徒の方々…

聖像破壊運動(イコノクラスム)

「聖像破壊」を、 1.信徒が、自身の宗教に属する聖像を破壊する2.特定の宗教の信徒が、異教の聖像を破壊する に分けて考える。 現代においては2のパターンがメジャーだろうが、1のパターンも忘れてはなら ない。 2のパターンで多くの人がイメージする…

忘却術

記憶術と対になる、特定の記憶を忘れる方法。 まず「忘却術」という用語については限られた場面でしか使われないため、ここ での便宜上の呼び名である。 忘却術を歴史上最初に求めた人物は、古代ギリシアで活躍した指揮官テミストク レスだろう。世界史にも…

ブルーノ、ジョルダーノ(Bruno、Giordano)

ジョルダーノ・ブルーノ(1548-1600)は、イタリアの哲学者で、ドミニコ会の修道士でもあった。 世界史を履修した人なら、聞いたことがある名前かもしれない。地動説論者の一人として有名で、最期はカンポ・ディ・フィオーリ広場(Campo de'Fiori 通称「花の広…

地球平面説

地球は球体ではなく、平面であるとする説。 『不思議の国のアリス』の冒頭、アリスがウサギの穴に落ちる場面で、次のようなセリフがある。 「このまま地球をつきぬけちゃうのかしらん?頭を下にしてあるいてる人たちのなかへ、ひょっこりあたしが出ていった…

人体冷凍保存(クライオニクス)

不治の病に侵された人体を冷凍保存して、蘇生法が完成した時に解凍する技術。 人体を冷凍すると、細胞内の水が凍り体積が増える。そうすると細胞を包む細胞膜が破壊され、人体に多大なダメージを与える。 こうした問題を解決すべく、体内の液体を不凍液に入…

『雪風』(曲)

www.youtube.com 日本のバンド、スピッツの曲。2016年発表の15枚目のオリジナルアルバム『醒めない』に収録。同バンド40枚目のシングル曲(こちらはアルバムの前年に発売)でもある。 正直、最初聴いたときからどことなく死に近い匂いを感じたが、テレビ東京…

『ブライトン街道にて』(原題:"On The Brighton Road")

イギリスの作家、リチャード・ミドルトン(Richard Middleton 1882-1911)に よる短編。原題は"On The Brighton Road"で、題訳は『幽霊船(魔法の本棚)』(訳:南條 竹則 国書刊行会)に拠る。ミドルトンの作品をまとめて読めるのは日本語では多分この短編…

屈葬

葬儀形態の一種。遺体の足を折り曲げた状態で埋葬を行うこと。 日本だと妙にメジャーな単語で、中学生でも知っているだろう。恐らく日本史を学ぶにあたり、かなり最初に知る言葉なのも関係しているかもしれない。 英語だとcrouched burialやflexed burialと…

『らくだ』(落語)

古典落語の演目の一つ。作者は上方の落語家、4代目桂文吾(1865-1915)。 とある長屋に住んでいた「らくだ」というあだ名の男が、フグを食って死んでしまう。兄貴分の「熊五郎」というあだ名の男がやってきて、彼の葬儀を執り行うため、彼にゆかりのある人…

『ハリーの災難』(原題:”The Trouble with Harry”)

1955年公開の、アルフレッド・ヒッチコック監督による映画作品。 「ハリー」は中心人物なのだが、映画の最初から最後まで死んでいる。遺体が主人公の作品である。 村の一角で少年が遺体を目撃するところから物語は始まり、彼を殺した心あたりのある人々が、…

死んだふり

学術用語では「擬死」という。 動物が死んだふりをするのは相手の注目を避けるためだが、人間社会における擬死はむしろ注目を集める手段である。 注目を集めるために死を使う生き物は他にいるだろうか。死臭を放つラフレシアくらいしか思いつかない。 「死人…

闘争・逃走反応(fight-or-flight response)

動物が脅威に晒されたとき、アドレナリンやノルアドレナリンなどのホルモンによって身体・心理的に起こる反応。 「闘争」「逃走」の掛け言葉になっており、学術用語と思えぬユーモアにまずは驚く。変わった翻訳をしたものだなあとずっと思っていたのだが、翻…

『ゾッとしたくて旅に出た若者の話』

グリム童話の物語のひとつ。 色んなバリエーションがあるようだが、タイトルなどは池内紀訳の『グリム童話』(ちくま文庫)のものを引用。 のらくらの次男坊が、「ゾッとする」とはどういうことかを知るために旅に出る。旅先で、三日間番をすれば財宝や美し…

「須磨海岸にて」

2chの怖い話で、お気に入りを挙げよと言われて、真っ先に思いつくのがこの話。 『須磨海岸にて』|洒落怖名作まとめ【怖い話・都市伝説 - 長編】 | 怪談ストーリーズ 上のリンクから確認していただければと思うが、とにかく途中からよくわからない。話の冒頭…

ジョン・タイター(John Titor)

アメリカ生まれのタイムトラベラー。2000年頃にアメリカの掲示板に現れたそうで、自身は98年生まれと名乗り、2036年の未来から、主にアメリカにまつわる様々な予言を残した。 この人物の噂は、残念ながら日本ではそれほど市民権を得られなかった。ノストラダ…

義務

正直言うと、苦手な言葉。「義務」という言葉の裏には、絶対服従を強いるような命令や権威が見え隠れするため。 ただ、恐らく誰にとってもそうなのだろう。 古代の記録を見返してみると、旧約聖書には『ヨナ記』という話がある。神からの使命を聞いた若者が…

最初の記事

初めまして、管理人の平井です。 当ブログ最初の記事ということで、まずは簡単なご挨拶から。 まずは当ブログの紹介です。 平井は劇団のお手伝いをしており、週一ペースでラジオ収録をしております…。私生活を小出しで明かしていく中で、個人としても情報を…