何かが道をやってくる

管理人:平井宏樹

闘争・逃走反応(fight-or-flight response)

動物が脅威に晒されたとき、アドレナリンやノルアドレナリンなどのホルモンによって身体・心理的に起こる反応。

 

「闘争」「逃走」の掛け言葉になっており、学術用語と思えぬユーモアにまずは驚く。変わった翻訳をしたものだなあとずっと思っていたのだが、翻訳元となった英語(fight-or-flight response)からすでに掛け言葉になっていたようだ。

ただ、この単語そのものがふさわしくないと少し問題になっているようだ。実際に脅威にさらされた時、動物が見せる反応は「闘争」や「逃走」に限らないため、「急性ストレス反応(acute stress response)」などと言い換えるべきという議論がある。言い換えるのも結構だが、韻が踏めないのは少し残念だ。なぜ正確さにこだわると、リズムが悪くなるのだろう。

 

その一方で、「火事場の馬鹿力」と訳されることもあるそうだ。

Wikipediaにて「火事場の馬鹿力(Hysterical strength)」のページを見てみると、窮地に立たされて馬鹿力を発揮した人々のエピソードが記されている。

物足りないのが、他人を守るために力を発揮したらそのエピソードは残るのだが、自分自身のために発揮しても、エピソードにならないことである。自分で自分を助けたところで誰も表彰はしないだろうから、仕方のないことであるのだが。

でも実際に知りたいのは、いざ自分が窮地に立たされて生き延びることができるかどうかだ。クマと戦って勝った人の話など、もう少し聞ければいいのだが(このページには一応、ホッキョクグマから子どもを守った女性のエピソードも書かれてはいる)。

 

実生活を考えてみると、死に瀕する経験が少ないため、いざ危険に瀕しても逃げることに頭を使って、戦おうなどとは思わないだろう。キューブラー・ロス提唱の「死の受容への五段階」でも、怒りの前には否認がある。地獄の果てまで逃げおおせ、崖っぷちまで追い込まれないと「馬鹿力」は多分出せない。でも、いざとなったら自分はやるんだぞ、と思うことが救いになることもあるのだろう。

 

参考

ja.wikipedia.org

en.wikipedia.org